― 開催中の企画展 ―

    むらかみよしこタペストリー展「いのちを抱く~地より来て地に還るもの~」

     2022年7月1日(金)~9月30日(金)
    むらかみよしこタペストリー展
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    むらかみよしこタペストリー展

    「いのちを抱く~地より来て地に還るもの~」


    会  期 2022年7月1日(金)~9月30日(金)

    休 館 日 毎週月曜日(祝日の場合開館し、翌日休館)


      ゲンヤの原野は 見わたす限り広くて、

      草原や森や川や水たまりがあって

      いつも風がゆるやかに渦巻いている。

      たくさんの虫や鳥や動物がいて、野の花はやさしく揺れる。

      ゲンヤの原野にいると私は満ちてくる。

      時の流れは一瞬止まり、また無限の時を駆けていく。

      大地に触れていると たくさんの生命の気配を感じ、

      遠い日の懐かしい歌が聴こえてくる!


     「暗い雨の夜…濡れそぼった草木の下は 植物の立ちのぼる青くさい匂いと湿った地面から醸し出す枯草や微生物の入り混じった鄙びた濃厚な気配でいっぱいだ。 私は地面に横になっておまえの体に添い寝して おまえの匂いや感触を確かめたいと思う。そして一緒に大地に溶け込みたいと願う。私の腕の中でおまえがまどろみ そして今私と共に大地と一体になれたらと思う。夜ごと おまえに寄り添い一緒に雨の冷たさを感じ、土から立ち昇る匂いを吸い込む。大地がすべての死を受け入れるように、私は死を抱きしめられるか。わたしはうめく。わたしは歯ぎしりしている。わたしはほえている。

     しかし私はまだ 生まれたばかりの まだ見たことのない生命の気配を夜の闇の中に捜していた。再生する生命の痕跡を、生まれ出ようとする生命の蕾を…。」 「生命の森、生まれ来る生命が輝いている季節。おまえの最後の息は この山々の息吹の中に混じり今この季節の中で 新しい姿を得て 陽だまりに輝いているか。 いのちが満ちていく。いのちが満ちている。この地上に、この大気中に、すみずみまでも。おまえのいのちも あっちにもこっちにもすべてのものに宿って満ちる。 おまえの息は 木々も風も、虫も草も、岩も、川も、すべてのものが受け継ぎ、息を吐き出している。」


     村上原野が2018年に創作した作品「地より来て地に還るもの」はエゾシカをモチーフに、生死再生をテーマにした生命と魂の輝き、鎮魂と再生の祈りに満ちあふれた渾身の力作である。全体に施された原野の縄文の渦は やさしく美しい渦巻き文様に始まり、外に湧きあがる渦は連続し上昇しつつ空間を取り込んでダイナミックに内外に増殖していく。大地の子宮の小さな生命の萌芽は やがて大宇宙へと一挙に連動していく文様渦となる。大地を基底に、すべての生命は循環する生と死と再生のリズムの中にある。村上原野は 自然の中の他の存在と融合する精神世界を持ち 独自の縄文造形表現を確立した。「地より来て…」は死にゆくものの哀しみ、諦念、見果てぬ夢、そして母なる大地に抱かれて一体になることへの安堵、再生への切なる祈りが入り混じった深い想念に満ちた作品。こうした作品を若い村上原野が既に作り上げ、生と死の境界をまたぐ内的体験を創作の中で突き詰めていたのだ。

     この作品を見ると、若くして地に還らなければいけなかった原野のことを思う。私は還ろうとする原野に寄り添い抱きしめたいと願う。このタペストリーは、夜ごと機(はた)の前に座り、原野の名前を何度も呼び、原野の縄文の渦をなぞり、大地に還っていく原野に寄り添いたいと願った日々を織りあげた作品です。


    「生命」の対極である戦争が世界中で吹き荒れている。

    大地も海も川も、山も草木も、動物も鳥も虫もヒトも みな傷つき苦しんでいる。

    ヒトはいつまで戦争を続けるのか。

    大地に満ちる生命の流れが途切れ、散り散りになって破壊されていく。

    ヒトはどこに向かって歩いてゆこうとしているのか。

    文明の果てに、ヒトは大地の生命の源泉を傷つけ犯し、大地の精霊たちを破壊していく。

    大地に根ざす思考、生命の大地への祈りを造形した縄文造形家・村上原野の思いと共にありたいと今切に思う。


    (むらかみよしこ)


    〈羊毛の草木染・手紡ぎ・綴織(つづれおり)による手織り作品〉

     草木の葉や枝を煮出すと、部屋中に何とも言えない素敵な匂いが満ち満ちて、それぞれの植物のもつ微妙な色が溶け出してくる。羊の毛を入れ静かに煮て染めの作業。これを何度となく繰り返し、季節をめぐるうちに多彩な色が手元にたまってくる。草木を煮出していただく色はみな優しく美しく生命の香りを漂わせている。

     染織家むらかみよしこは、1988年北海道で羊の原毛を使った手紡ぎ・草木染・手織りを始め、主に綴れ織りの手法で作品を制作。大自然に息づく命の輝きを表現したものが多く、そこでは動物や植物、虫や魚やもののけなどあらゆる生き物たちが、共に大地に生きる同類として繋がっています。テーマは「いのち」。現在は岡山県新見市法曽の地で、身近な木や草のもつ命の色をいただき、命への祈りをタペストリーに織り込みます。草木の醸し出す深い色に彩られたいのちの世界を感じていただければ幸いです。


    使用した主な植物(藍 玉ネギ アカネ クルミ フキ ウド ヨモギ クズ マリーゴールド 月見草 紅茶 緑茶 モッコク キウイフルーツ 桜 野菊 五倍子 ヘマチン ノブドウ セージ クワの葉 シソ アカソ イタドリ 白樺 ヨウシュヤマゴボウ セイダカアワダチソウ ヤシャブシ ヤブツバキ ヒメジオン スギ ヒノキ ブドウの皮 馬酔木 クリ アメリカセンダングサなど)





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